物持ちのよい高齢者が亡くなった時、遺品整理が残された遺族の大きな負担になる事は珍しくありません。そうなる前に生前整理をして欲しいところですが、当事者への伝え方は難しいものです。円満に生前整理を進める為のポイントをお伝えしたいと思います。
遺品整理と生前整理
遺品整理とは、遺族が故人の持ち物を片づけることを言います。一方、生前整理とは、自分が亡くなる前に身の回りの物を自分で整理することを言います。
生前整理という言葉が広がったのはここ数年の話です。超高齢化社会が進む中で、65歳以上の単身世帯、いわゆる「独居老人」が増えたことにより、身の回りの世話をする人がいないままこの世を去るケースが増えています。突然空き家になった家に入ると、部屋いっぱいに物が溢れている現実を遺族は突然突きつけられます。どこから手をつけていいか分からず、全く遺品整理が進まないというケースが多いのです。
このように、遺品整理の負担が大きくなってきていることもあり、元気なうちに所持品を少しずつ整理しておきましょうという風潮になってきたわけです。
生前整理をお願いする難しさ
しかし、生前整理をするのは「生きている間」です。親子や夫婦でもなかなか言い出しにくいものです。なにしろ自分が死ぬ時のことを考えて荷物を整理してほしいとお願いするわけですから、言葉を選ばないと相手に誤解を与え、大変傷つける結果になってしまいかねません。
では、どのように生前整理を提案すればいいのでしょうか。大事なことは、「相手の気持ちや立場になって言葉を選ぶ」ということです。
生前整理をしてほしい相手との関係は、恐らく親子や夫婦などの家族が多いかと思います。同居か別居かにもよりますが、例えば長らく別居している家族が突然現れ、「遺品整理が大変だから、家の物を今のうちに整理してほしい」といったところで、首を縦に振る人はほとんどいないでしょう。今まで築いてきた生活がありますから、蔑ろにされるのは心外だと思います。その点で言えば同居の方が伝えやすいかもしれませんが、同居の場合は揉めてしまうと居心地が悪くなりますので、こちらも注意が必要です。
高齢者の方が素直に受け入れられないのは、「自分は早く居なくなってほしいのか」と勘ぐってしまうからではないでしょうか。荷物の整理を出来るだけ前向きに捉えてもらうために、「生前整理」という言葉は使わず、単純に「部屋を片付けようか」と誘うのも良いかもしれません。「重い物を持つのも大変だよね」「物が多くて、躓いたりしたら危ないから」というように、相手の気持ちや暮らしに共感する言葉を使うと受け入れてもらいやすいでしょう。
生前整理の進め方のポイント
生前整理の作業は、任せきりにしないことが大切です。「片づけてほしいのに片づけてくれない」となると、こちらもストレスが溜まりイライラしてしまいます。相手は高齢者ですから、いつも気持ちが前向きでやる気に満ちているとは限りません。常に相手の気持ちに寄り添って、急かしたり押し付けたりしないようにしましょう。
また、自分以外の兄弟や親族も生前整理を手伝う際は、一枚岩となって取り掛かることも重要です。片づけに関して方針が違うと作業が滞ってしまいますので、スムーズな生前整理を行うためには、どこまで荷物を片づけるかを事前にすり合わせ、「生前整理のゴール」を作っておくとよいかもしれません。
年を重ねれば重ねるほど、人は頑固で意固地になってくるものです。生前整理の必要性は理解できるものの、反発して素直に受け入れられないのが本音ではないでしょうか。とてもデリケートな問題だからこそ、お互いが納得して進められるようにしたいですね。
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