遺品整理が悲しい思い出になる前に。トラブル事例と対処法まとめ。

遺品整理が悲しい思い出になる前に。トラブル事例と対処法まとめ。

遺品整理は、故人と遺族の大切な作業です。しかし、ほとんどの人は経験や知識がないため、思ってもみないようなトラブルに巻き込まれることがあります。故人との大切な思い出を台無しにしないためにも、遺品整理のトラブル事例と対処法を覚えておきましょう。

家族・親族間のトラブル

遺品整理は、自分1人で出来るものではありません。家族や親族がいる場合、その全員が遺品整理の当事者になるのです。しかし、遺族の高齢化、遺族間の意見の不一致などで、残念ながらトラブルになるケースがあります。

○遺族が全員高齢だった場合、遺品整理は業者に頼むのがベスト

厚生労働省が2017年に発表した、日本人の平均寿命は男性で80.75歳、女性で86.99歳になりました。世界的な長寿国である日本ですが、平均寿命は年々高くなっています。またこの数字はあくまで平均であり、半数近くの人は平均寿命を超えて最期の時を迎えることになります。

その為、亡くなった時には遺された家族・親族が全員高齢者ということもあります。遺品整理を行うには体力と気力が必要ですので、高齢者だけで遺品整理を行うことは到底できません。そうなった場合は、迷わず専門の業者にお願いをしましょう。

故人が高齢であった場合、部屋中に物がぎっしり詰まっていることが多いものです。独居老人の居室が、ゴミ屋敷になっていることも珍しくありません。大正・昭和を生き抜いてきた方は、その時代背景も影響して全てのものを大切に仕舞っておく傾向があります。例え、1人暮らしの高齢者であっても、想像を絶する量の片づけになるのです。

遺品を片づけないまま放っておくと、異臭・害虫が発生して近隣住民とのトラブルにまで広がってしまう恐れがあります。山のような遺品整理を高齢の遺族だけで行おうとしても、時間だけが過ぎていくだけです。専門業者の助けがあれば、遺品整理を前に進めることが出来るでしょう。

○遺品の破棄で揉める前に、事前の話し合い

遺族が複数いる場合、一堂に会して遺品整理を行うことは珍しく、相続人などの「主に遺品整理を進める人」を中心にして行われることが多いはずです。しかし、遺品に対する価値観の違いによって、揉め事に発展してしまうケースがあります。

遺品の中には価値がある物、ゴミ、形見などが混在しています。ある人にとっては処分品だと思うものであっても、ある人から見れば故人との思い出の品だったりするのです。

遺族全員が同じように遺品整理に時間を費やしていればいいのですが、そうはいきません。必死に片づけをした後になって、手伝いをしなかった親族から「残しておいてほしかったのに」と文句を言われれば、いい気持ちはしないでしょう。自分だけの判断で処分してしまうと、後からトラブルになる可能性が高いと言えます。

対処法としては、遺品整理を始めるまえに、価値観のすり合わせ、遺品の取り扱いに関して取り決めをしておくことが重要ではないでしょうか。

○「遺品整理をしたくない」、相続人の義務を放棄するトラブル

遺品整理をする必要が出てきた時、遺族の中で「誰がするのか」という話になります。家族・親族が多ければ多いほど、「時間がない」「遠方に住んでいて無理がある」などと理由をつけて、その責任から免れたいと思う人も出てくるでしょう。さらには、「業者への費用も負担したくない」と言ってくるかもしれません。

しかし、遺品整理は誰かに全てをなすりつけていいものではありません。遺品整理は、相続人の義務です。全ての相続人が、平等に時間も費用も費やすものなのです。

「時間もお金も出したくない」と言うのであれば、相続放棄の手続きをとってもらうのも一つの手段だと思います。相続放棄をすると、遺品整理をする義務がなくなります。しかし、遺品から価値のあるものが出てきたとしても、相続放棄をした人にはそれを手にする権利はありません。

注意点は、相続放棄をすれば借金などの負の遺産を請け負うこともないという点です。遺品整理も借金も押し付けられるなら、相続放棄をされては困ると思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、親族全員が相続放棄をしても法律的には問題ありません。相続の事実を知った日から3ヶ月以内であれば、遺産や遺品の中身を見て、どうするか決めることができます。

とはいえ、法律的には相続放棄をしても次の相続人が決まるまでの「管理義務」が残ります。やはり相続人になるからには、遺品のけじめがつくまでその責任を負わなければいけないのです。

○親族・家族間のトラブル対処法は?

一番の対処法は、生前整理を進めておくことでしょう。亡くなった後のことが決まっていれば、遺族が混乱することはありません。故人の意志を尊重して進めることができれば、トラブルのリスクは低くなるはずです。普段から親族・家族間でコミュニケーションを取り、良好な関係を築いておくことも大切だと思います。

形見分けでのトラブル

家族・親族間のトラブルの中でも、特筆すべきは「形見分け」にまつわるトラブルです。遺品整理の中でも、故人の愛用品や記念品を親族や友人に贈ることを「形見分け」と言います。仏教信仰の厚い、日本の風習の1つです。一般的には、四十九日や法要に合わせて形見分けを行います。

この「形見分け」にも、トラブルの種が潜んでいるので、注意が必要です。

○形見分けのマナー違反によるトラブル

形見分けにはマナーがあります。基本的に、目上の人から目下の人に贈ることになります。ですので、その逆はマナー違反ということになり、大変失礼な行為にあたるのです。この前提を知らないがために、目上の人に遺品を贈ってしまい、トラブルになるということがあります。

また、形見分けは基本的に華美な包装をせずに贈ることになっています。白紙に「遺品」と記して、手渡しをするのが基本です。昔からのしきたりを重んじる方にとっては、決まった形でないことは受け入れられません。「非常識だ」と思われては、今後のお付き合いにも支障が出る可能性があります。

形見分けの際は、しっかりと約束事を押さえておきましょう。

○形見分けの品に贈与税がかかり、受け取った方が激怒

形見分けは贈り物ですので、一定以上の価値がある場合は贈与税がかかることがあります。特に注意を払わなければいけないのが、宝飾品などの貴金属、骨董品、美術品、着物、コレクション類です。資産価値は時価で査定されるため、年月が経って市場価格が急騰している可能性もあります。

形見分けされた物の市場価値が高ければ高いほど、贈与税の額もあがります。「故人の意志なので、受け取ってほしい」と言われて渡されたのに、とんでもない税金を支払わなければいけないと知った時は必ずトラブルになります。形見分けの際は、事前にその価値を調べてから相手方へ渡すようにしましょう。

○「誰が何を受け取るのか」で、関係性が悪化する

贈与税が発生するのは110万円以上の価値があるものですので、それ以下であれば非課税で譲り受けることができると言えます。基本的に形見分けの対象になるものは、「再販価値の高くない思い出の品」と定義されます。とは言え、欲が出て「少しでも高価なものがほしい」という人が出てくれば、金銭トラブルに発展します。

1つの遺品に対し、受け取りたいと言う人が複数出てきた場合は揉め事になる可能性が高いです。同じような価値のあるものが他にあればいいのですが、遺品となるとそう上手くはいきません。「故人との口約束がある」など、今となっては確認しようがないような理由をつけて、手に入れようとする親族も出てくるでしょう。金銭トラブルは、一度発生すると信頼関係を取り戻すのにとても時間がかかります。金の切れ目が縁の切れ目にならないよう、遺言書に書き留めてもらうなどの事前対策が必要でしょう。

遺品整理業者とのトラブル事例

残念ながら、遺品整理を業者に依頼した時もトラブルに巻き込まれるケースがあります。心無い悪徳業者と契約してしまわないよう、しっかりと下調べをしてから業者を選定しましょう。

○不当な買取・高額請求には、複数社からの見積もりを

遺品整理業者の買取サービスは、遺品整理の費用と買取価格を相殺するのが一般的です。しかし、専門的な知識のない依頼者の立場から見れば、買取価格が適正であるかは、正直分からないところだと思います。二束三文で買い取られていても気が付かないでしょう。

遺品整理を早く終わらせたいという一心から、業者からの言い値を鵜呑みにしてしまっては、相手の思うつぼです。出来ればその場で判断せず、別の業者に査定を依頼することをおすすめします。もし、「即決してもらえれば高値をつける」というように、強引な言い方をするようであれば、その業者を疑ったほうがいいかもしれません。

次に、見積もりとはかけ離れた「高額請求」をしてくる業者とのトラブルです。先ほどの買取と同じで、遺品整理の相場は素人では分かりにくいものです。「この遺品の量と汚れ具合なら、いくらになります」と言われれば、「そうですか」と首を縦にふってしまいがちでしょう。依頼者の経験のなさに付け込んで、高額請求をしてくる業者が存在します。

さらには、作業後に次々と追加請求をする業者があることも事実です。これらの業者は、最初は低価格の見積もりや請求を出してくるのが常です。あまりにも安いと思った時は、疑ってかかった方がいいでしょう。

このような悪徳業者に巻き込まれないためには、見積もりの詳細を明示してもらうこと、複数の業者から見積もりを取ること、追加料金の有無を事前に確認することなどがあげられます。優良な遺品整理業者であれば、追加料金なしで対応することがほとんどです。万が一、金額が変わる場合は依頼者が安心できるように、内容の説明と額の根拠を示すはずです。金額に関してあいまいな事を言うような業者には、依頼しないようにしましょう。

○不法投棄には許可証の確認

遺品整理には、様々な種類のゴミが大量にでてきます。それらを正しく分別して処分してもらえるのは、業者に依頼する最大のメリットの1つです。しかし、不法投棄で処分費用を浮かせようとする悪質な遺品整理業者がいるのです。

優良な遺品整理業者は、許可証を必ず持っています。特に遺品整理の場合、一般家庭の不用品を処理するための「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要になりますので、確認しておきましょう。

しかし、無許可で回収している業者も少なくありません。そういった業者にはゴミの引き取り先がないため、不法にゴミを捨てることになります。その分、処分費用が浮くので業者の利益になるという仕組みです。
不法投棄は、法律で罰せられる行為です。ゴミの中から持ち主に繋がる情報が出てきた場合は、依頼した側に連絡がくることも考えられます。遺品整理が終わったからと言って、業者の連絡先などを破棄してはいけません。必ず連絡のつく電話番号や住所などを控えて保管しておきましょう。

○遺品の盗難・破棄には立ち合いが有効

悲しいことですが、窃盗を行う悪質業者がいる事も事実です。遺品の中には価値の高い貴金属や貴重品、有価証券や現金などが見つかる時があります。遺品整理を依頼した側も、自分の持ち物ではないため把握しておらず、たとえ盗まれていても気が付かない場合がほとんどです。

また、形見として置いておきたかったはずの品を勝手に捨てられているということもあります。経験豊富な業者であれば、「もしかしたら、大切なものかもしれない」という目で遺品を仕分けてくれます。確認もせずに破棄することはありえません。

盗難や、無断で破棄されるといったトラブルが起きないようにするためには、事前に、ある程度の貴重品を引き取っておく、または遺品整理の現場に立ち会うようにするのがベストです。

○従業員の対応は口コミを参考に

遺品整理業者は、契約を取るために様々な努力をしています。営業努力によって低価格を実現していたり、社員教育に力を入れていたりするところもあるでしょう。

一方で、利益だけにこだわって社員教育を疎かにし、悪質な営業行為を行う業者もあります。遺族は、大切な人を亡くし、心身ともに疲労している状態です。その弱みに付け込んで、押し売りのように居すわり、「帰ってほしいなら契約しろ」と半ば脅迫のようにサインをさせるというのは、本当にある話なのです。

従業員の対応というのは、会社の良し悪しが映し出されます。遺品の取り扱い方も、その一つです。中には、遺品を不用品と同じように、雑に扱うところもあります。優良な業者は、従業員に「遺品整理士」という専門の資格を取らせています。遺品整理士の資格があれば、遺品の取り扱いについて一通りの知識をもっていますので、遺品をゴミのように扱うことはしません。何より、遺族の気持ちに寄り添い、丁寧な遺品整理を行ってくれるはずです。

実際に遺品整理が始まってみないと、従業員の態度をうかがい知ることはできないでしょう。その時は、口コミサイトの評判を事前にチェックしてみましょう。知人・友人に遺品整理を依頼した経験があれば、利用した業者を紹介してもらうというのが安心かもしれません。万が一、業者とトラブルになった場合は相談窓口にアドバイスを求めましょう。

最後に

遺品整理を行うことで遺族の気持ちが整理される、これが遺品整理の本来の役割だと思います。しかし、トラブルになってしまえば、故人との記憶が悲しい思い出に変わってしまいます。そうならないためにも、対処法を心得て遺品整理を始めて下さい。心穏やかに、故人との別れを締めくくってほしいと思います。

 

いつから始める?遺品整理の開始時期について

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