高齢化が進み、孤独死が問題になっている現在の日本において、遺品整理業の需要は右肩上がりで増加しています。同時に「遺品整理士」という言葉もよく耳にするようになってきました。今回は、今話題の「遺品整理士」について詳しく解説していきます。
遺品整理士とは?
遺品整理士とは、「一般社団法人遺品整理士認定協会」が認定した資格のことです。遺品整理士認定協会は、遺品整理業界の社会的役割と、業界の健全化を図るために遺品整理士養成講座を運営、認定試験の実施を目的とし2010年に設立されました。
では、遺品整理士の資格を取得するにはどのような手順を踏めばよいのでしょうか。
まず、遺品整理士養成講座を申し込み、それを受講します。受講資格は特に定められていません。
受講期間は、目安として、およそ2か月程度。通信講座なので、空いた時間を使って学ぶことができます。養成講座の内容は遺品の整理や処分を代行する際の遺品の取り扱い方、整理の手順、廃棄物やリサイクル品の取り扱いに関する法規制などです。
受講が終了したら次に、遺品整理士認定協会へレポートを提出します。レポート内容の結果が合否を決定します。遺品整理士認定協会が定める基準に達していれば、遺品整理士として認められ、認定証書が発行されます。
なお、遺品整理士は国家試験ではありません。
しかし、利用者が数ある遺品整理業者の中から依頼先を選択するにあたり、遺品整理士の資格というのは信頼を置けるポイントであり、重要な選択基準になります。
また、資格を取得すると、自動的に遺品整理士認定協会に加盟することになります。そのため、協力指定店として遺品整理業を営むことができます。
遺品整理士認定協会としては、遺品整理士の健全化に力を入れており、遺品整理を依頼する遺族の方へ信頼できる遺品整理士を紹介することを第一に目的としています。そのため、適正価格、適正サービスを提供している健全な企業を、協会から優良事業所として紹介することもあります。
遺品整理士が求められる背景
かつて遺品整理といえば、ご遺族が行うことが一般的でした。ひと昔前には、ほとんど存在しなかった遺品整理の専門業者が、近年急増しています。その背景として考えられるのが、高齢化と核家族化です。
・高齢化
日本人は、平均寿命が長く、世界においても有数の長寿大国で知られています。長生きできることはありがたいことですが、高齢化がすすむことで、ご遺族も高齢であるケースが増えています。高齢のご遺族にとって遺品整理は体力的に困難が生じる大仕事です。
そのため、専門業者に作業を依頼するケースが増えているのです。
・核家族化
内閣府が発表している高齢社会白書というデータによると、平成26年時点で子どもと同居している65歳以上の高齢者は40.6%。昭和55年には69%だったという数字と比較すると、約30%も減少しており、高齢者の一人暮らしが増加していることが分かります。
実際に、高齢者の5人に1人が一人暮らしをしているというデータがあり、これは日本の社会問題の一つになっています。
高齢の親と離れて暮らす家族は、遺品整理を行うために出向く時間をなかなか取れなかったり、また、少子化により遺品整理をする人手がそもそも足りなかったりと、各々ご家庭で事情があります。そうしたご遺族にとって、遺品整理の専門業者はありがたい存在なのです。
・悪徳業者の増加
実は、遺品整理業へ参入するうえで、明確な決まりはなく、法律も整っていません。そのため参入業者が拡大しています。遺品整理専門業者や便利屋、運送業者など遺品整理業に携わっている企業は多く、今や全国で9000社以上存在するとされています。
需要が高まるにつれ、問題となっているのが、いわゆる悪徳業者の存在です。例えば、初めの見積り金額と異なる高額な請求をする業者、遺品の不法投棄を行う業者、貴重品を持ち去る業者などによるトラブルが後を絶ちません。
遺品整理士が求められる背景には、社会情勢の変化だけでなく、悪徳業者によるトラブルを事前に防ぐ意味合いもあるのです。
遺品整理士の仕事について
遺品整理士とは実際どのような仕事なのでしょうか。具体的に見て行きましょう。
・仕分けと不用品の処分
仕分けとは、大量の遺品を「残すもの」「処分するもの」「供養するもの」で分ける作業です。この作業は最も労力のいる大変な作業なのです。
遺品とは、残されたご遺族にとっては故人の生きた証。それぞれに想いが詰まっています。なので、仕分けをする際は、ご遺族の心情に寄り添い、十分な配慮をすることがプロとして第一条件です。
遺品の仕分けの後は、不用品の処分です。多くは、可燃ゴミや粗大ゴミとして捨てることになるでしょう。しかし、自治体によって捨て方のルールが異なります。遺品整理士は、処分する不用品を、自治体のルールに従って正しく処分します。
遺品整理で出た全ての不用品を分別してゴミの日に出すだけでも大変な作業であることが想像できます。また、仕分けした遺品を、リサイクルに出したり、不用品回収業者に回収を依頼したりする
場合もあります。
・供養する
写真や仏壇、故人の愛用品など、ご遺族が供養を希望する場合、菩提寺に依頼して供養してもらいます。しかし、菩提寺がないご家庭には、遺品整理士が供養可能な施設を紹介します。
・遺品整理以外のお手伝い
遺品整理士とは、遺品整理だけが仕事ではありません。部屋の掃除、除菌・消臭、形見分けの配送手配など、遺品整理に伴う作業は対応します。
また「遺産協議の相談」や「家屋の売却について」など、遺品に関する相談を受ける場合もあるでしょう。その場合は、適切な専門家を紹介することも遺品整理士の重要な仕事の一つです。
遺品整理を依頼する際のポイント
遺品整理を依頼する際にトラブルになる原因で最も多いのは、遺品整理業者と依頼者の食い違いです。確認するべき点が漏れていることで「言った」「言わない」という相違が生まれるため、以下のポイントに注意し、正式な見積りを書面でもらいましょう。
見積り内容に不明な点はないか、抜け漏れはないかなど、契約書に押印する前に、慎重に確認してください。
・手元に残すものを明確にしておく
貴重品や思い出の品、ご遺族の方が受け継いでお使いになる予定のものなど、手元に残すものはあらかじめ明確にし、見積もりの段階で、遺品整理業者に伝えます。
また、探してもらいたいものがある場合は、なるべく具体的に伝えることで、要望に沿った対応をしてもらえます。
・要望を具体的に伝える
例えば、賃貸のお部屋なら引き渡し日時が決まっている場合もあるでしょう。故人が遠方に住んでいた場合であれば、立ち合いできる日程の調整の都合もあるでしょう。そうした希望の日時は事前に必ずお伝えします。
また、買取りの希望品、遺品の供養の要望、ハウスクリーニングの要望なども明確に伝えましょう。確認ポイントは「いつまでに・何を・どうするか」です。
・作業中の対応などもしっかり確認を
作業当日の段取りもあらかじめ確認しておくと安心です。例えば、実際作業にあたる人数、車両の駐車場所、ご近所への挨拶回り等の配慮、立会いの時間などです。
・作業後の仕分け状況と遺品確認
手元に残すもの、買取り希望のものなどは、作業後に、遺品整理業者と連携をとって確認しましょう。できたら、当日中に遺品整理業者と確認作業することをお勧めします。
まとめ
遺品整理士についてご理解いただけましたでしょうか。故人の大切な思い出がつまった遺品の整理は、責任をもって適切に行ってくれる遺品整理士にぜひ依頼したいものですよね。
万が一のことがあった時には、トラブルに巻き込まれる可能性を最小限にするためにも、遺品整理士の資格をチェックし、依頼先を選ぶようにしましょう。