セルフネグレクトによる生活環境の崩壊、ゴミ屋敷の予防と抜け出し方とは?

セルフネグレクトによる生活環境の崩壊、ゴミ屋敷の予防と抜け出し方とは?

「セルフネグレクト」は、自己放任と訳される心の病です。孤独死やゴミ屋敷といった、現代の社会問題と密接に関わっており、年齢に関係なく誰にでも起こり得ます。セルフネグレクトからゴミ屋敷に陥る原因、その予防法と抜け出し方を考えてみたいと思います。

セルフネグレクトの解説

そもそも英語の「ネグレクト」は、怠慢や無視、ないがしろにすることを指しています。日本では、育児放棄を「ネグレクト」という言葉で表現します。そこに「セルフ」が付くと、自分自身のケアを放棄するという意味になります。

具体的に言うと、定期的な食事を取らずに過ごしたり、入浴や掃除を放棄して身辺を清潔に保つことをしなかったり、周りとの接触を断ったりする行為です。時には、必要な介護・医療行為さえも拒絶して命を危険にさらすこともあります。

つまり、我々が日常生活を送る上で、当然行うべき事を行わない・行う能力がないために、全ての事を放棄するのが「セルフネグレクト」なのです。

セルフネグレクトは単なる一個人の心の病に留まらず、社会問題と化している孤独死やゴミ屋敷の一因になっています。その為、日本でもここ10年の間に研究が進み、政府が調査に乗り出しています。2011年に内閣府経済社会総合研究所が発表した調査報告書によると、セルフネグレクトに陥っている高齢者は推定1万2000人以上と言われています。

60歳以降の方で、未婚または死別による独り暮らしをしている人にその傾向が強い、という調査結果も出ています。高齢化や独居老人の増加に伴い、今後ますます深刻化することが懸念されています。

セルフネグレクトに潜む危険

セルフネグレクト状態になってしまうと、どういった事が起きるのでしょうか。

まず始めに、生活環境が悪化していきます。その最たる事例が、ゴミ屋敷です。始まりは、「外に出たくない」という気持ちの芽生え。そして次第にゴミ出しなど必要な外出行為までも控えるようになります。外に出なくなると、人に会わなくてもよくなるので「掃除や入浴が面倒」になってきます。ゴミが溜まっていても片づける気力が沸かず、放置されます。散らかった部屋や自分自身の事を知られるのを恐れて、さらに家の中に引きこもるという悪循環に陥っていきます。

家族を始めとする周囲の人間から孤立するようになると、社会から切り離され、判断力が低下して精神的にも不安定になっていきます。最終的には、不衛生であることに対して羞恥心がなくなり、悪臭でさえ気にならなくなるのです。

自分自身への関心が薄れると、例え病気になったとしても治療に向かうことはありません。孤独死の8割がセルフネグレクトだと言われているように、最後には、命の危険な状態になっても自ら声を上げることが出来なくなってしまいます。

セルフネグレクトの要因

セルフネグレクトは高齢者に多いと言われていますが、その理由はいくつかあります。認知症など身体機能の低下によるもの、伴侶との死別や大病といった大きなライフイベントがきっかけになることもあります。

特に男性は、女性のような「ご近所づきあい」のコミュニケーションを取るのが苦手とされており、退職後に孤立する傾向があります。また、最近では高齢者だけではなく、若年層にもその傾向がみられるようになってきました。

セルフネグレクト→ゴミ屋敷の問題

セルフネグレクトからゴミ屋敷に発展してしまうと、そこから様々な問題が派生していきます。ゴミ屋敷になると不動産の価値は暴落します。異臭や害虫が発生しますし、火災の危険性が高まります。そうなれば、近隣住民と必ずトラブルになります。

注意勧告があったにも関わらず、片づけられないまま危険なゴミ屋敷を放置していると、行政代執行といって自治体が介入してゴミ屋敷の撤去に乗り出すことも考えられます。心の病がきっかけで、住むところさえ失ってしまうのです。

自身の健康被害も、避けては通れません。最悪の場合は、ゴミの中で孤独死を迎える結果になる恐れがあります。

「普通の暮らしを送る」という当たり前の権利を自ら放棄する、その影響は深刻です。

セルフネグレクトになるのを防ぐには

セルフネグレクトになるのを防ぐには、状態が悪化する前に早い段階で対策を取る事、また自治体など周囲の支援が重要です。

しかし、内閣府が行った調査では、セルフネグレクトになっている高齢者について「把握している」自治体は全体の25%程度に留まっています。また、高齢者の見守りネットワークを整備しているかという問いに対しては、「整備している」と答えた自治体は、全体の40%以下でした。まだまだ、行政による支援の手は行き届いていないのが現状です。

セルフネグレクトになりがちな1人暮らしの高齢者を、社会的孤立状態から救うのは簡単なことではありません。短期的なアプローチでは効果を得られないでしょう。
まずは自分の家族や友人といった、手の届く範囲でコミュニケーションを取り続けていくことが大切ではないかと思います。

セルフネグレクトからゴミ屋敷になってしまった場合

一旦、セルフネグレクトからゴミ屋敷になってしまうと、そこから元の姿に戻すのは非常に困難な作業になります。

ゴミ屋敷の住人が亡くなっていた場合は、遺族が片づけをすることになります。しかし、遺族だけで片づけを行うのは不可能です。また、セルフネグレクト状態である住人が片づけを決意したとしても、前に進まないのは目に見えています。分別されていないゴミの山、害虫や害獣、悪臭が入り混じった場所へ足を踏み入れるのは危険を伴います。

もしゴミ屋敷になってしまった場合は、潔くプロの清掃業者に依頼しましょう。費用はかかりますが、自ら片づけをする時間と労力、身の安全を考慮すれば賢明な判断です。そして何より、業者に頼めば確実にゴミ屋敷は片付きます。

ゴミ屋敷の清掃は、経験がものを言います。ゴミ屋敷の片づけは段取りよく、何よりスピーディに進めていかなければいけないからです。経験豊富なスタッフであれば、ゴミの種類・清掃の順序を把握し、近隣への配慮も行ってくれるでしょう。また、遺品を扱ったことのある業者であれば、ゴミ屋敷から遺品を探しだすことも出来ます。

依頼する業者を選ぶポイントを、いくつかご紹介しておきます。

○ゴミ屋敷清掃の実績が豊富にある
○秘密を厳守してくれる
○廃棄物処理の許可を得ている
○回収するゴミの種類を選ばない
○不用品の買取に対応している
○遺品を扱うための有資格者(遺品整理士など)が在籍している
○遺品の供養に対応している

といったことが挙げられます。中でも重要なのは、ゴミ屋敷清掃の実績と作業をするスタッフの対応力です。セルフネグレクトが原因のゴミ屋敷には、根底に心の病が潜んでいます。経験に乏しいスタッフが作業を行うと、心無い一言でセルフネグレクトの方ご本人、その家族や遺族を深く傷つけることになりかねません。

単純に料金だけを比較するのではなく、出来れば数社から見積もりを取ったり、実際にスタッフと言葉を交わしたりするのも有効です。ゴミ屋敷が抱える心の問題にまで真摯に向き合ってくれる業者が、本当の優良業者ではないかと思います。

最後に

セルフネグレクトは、人間関係が希薄になった現代病と言えます。しかし、周囲の関わり一つで、ゴミ屋敷や孤独死といった最悪の事態を免れることが出来るのです。
無関心が引き起こすセルフネグレクトは、他人事ではありません。身近な人の心と身体を守るために、日々のコミュニケーションを大切にすることが重要です。

 

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