私の祖母は、92歳でこの世を去りました。亡くなった後、私の母を含め3人の娘達が遺品の整理をしましたが思うように進まず、大変な労力と時間がかかりました。身内の思い出話になりますが、ここに記した遺品整理の苦労がどなたかのご参考になれば幸いです。
祖母という人
祖母はとても優秀な人で、女学校を卒業したことが自慢でした。手芸や編み物が得意で、孫の私にも洋服やカバンをたくさん作ってくれていたのを思い出します。そんなしっかり者の祖母も、晩年は痴呆が進み、要介護認定を受けて自宅とデイサービス施設を行き来する日々でした。私の叔母にあたる祖母の長女と同居していたので、長女が身の回りのお世話をしていました。同居を始めてから数年経ったある日、祖母は安らかにこの世を去りました。
祖母の部屋から出てきたもの
高齢だったこともあり、ある程度覚悟はしていたものの、突然訪れた別れはやはり大変悲しいものでした。四十九日を終え気持ちが落ち着き、ようやく遺品整理のために3人の娘が部屋に集まりました。
まず衣類や布団など、目の前にあるものから手を付けました。次はタンス、押入れと遺品整理を進めていくと、手紙や写真、貴金属が出てきました。また、痴呆が進む前に編んでいたであろう、編みかけのセーターも出てきました。部屋に飾ってある置物や人形、タンスやベッド、仏壇といった大きなものまであります。最初は順調に進んでいた遺品整理ですが、想像以上に祖母の持ち物が多く、どこから手をつければいいのか全員が途方にくれました。
処分に困ったもの
祖母のありとあらゆる持ち物を目の前にして、まず処分に困ったのは仏壇です。本来なら親から子へ、子から孫へと先祖代々受け継ぐのが正しいのでしょうが、娘3人は全員結婚しており、それぞれに家庭の事情もあります。祖母が大切にしていた仏壇を引き取る余裕はどこの家庭にもありません。悩んだ末、お寺に頼んで供養してもらうことになりました。しかし、それを運ぶのも一苦労です。立派な仏壇だったので到底女性の力では運べず、私の父や親族の男手を借りてなんとかお寺まで持っていきました。
次に介護用ベッドです。横になる人がいなくなると、とてつもなく大きなものに見えて途方に暮れました。どうやって部屋に入れたのか見当すらつきません。運び出すにしろ、人手が足りません。親族だけでは無理だと判断し、最終的にはリサイクル業者の方に自宅まで来て頂き、引き取ってもらいました。大型家具の処分には、リサイクル業者の方が強い味方だと感じています。
思い出の品を前にして
袖の足りない、編みかけのセーターを見つけたときは、「きっと優しい笑顔で編んでいただろうな」、「誰に着せるつもりだったのかな」と、元気だったころの祖母に思いを馳せながら、みんなで亡き祖母の思い出を話しました。
祖母の若い頃の写真、祖父とやりとりした手紙、押入れの箱には祖母の思い出がたくさん詰まっていました。葬儀の前に見つけていたら棺に入れてあげられたのにと、母は悔やんでいました。写真は手元に置いておく数枚を残し、残りはお焚き上げして頂きました。祖母の気持ちを考えると、処分するよりこれでよかったと思います。
祖母が亡くなったとき、その娘3人は全員60代でした。まだまだ健康で元気だとはいえ、結局全てを片づけるのに1年以上かかりました。それぞれ家も遠く、全員集まるのが困難だったこともあるでしょうが、本当に少しずつしか前に進みませんでした。
身内の中でも、遺品の処分方法に意見が割れてまとまらない事が多々ありました。しかし、それも今となっては良い思い出です。天国の祖母が納得いく形で、全ての遺品が整理されていることを願います。